合い言葉GG
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☆マサコのプロフィール
13才のときにグレン・グールドのピアノに 出会う。以来抱き続けたグールドに会うという夢を追って28才でカナダへ。後追い日記はその記録である。
属性はシャーマン。


☆ミクシに習って、ぬさんからの紹介状
不在の幻影から愛するひとを救い出し、グーグルキャッシュの中に愛のエクリチュールを刻印しつづける、GGの恋人。二人はもう触れあうことができないが故に永遠に惹き付けあうことができる、まるで恒星と惑星の関係のような、あらゆる恋人が夢見るユートピアに住むひとです。


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カテゴリ:後追い日記81年( 82 )

後追い日記81年38  ・3人きょうだい

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#3人きょうだい

上の息子は、病気で家にいると「マコ、一緒に遊んで‥‥」と寄って来る。へばりついて遊んでくれと言う割には、憎らしい、人を人とも思わないことを口にした。
「ピアノの練習を見てくれ」
というから、付き添うと
「そんな下手な英語で僕にピアノを教えるな」

フレデリック・フィリップという王子様のような名前を持った子供だが、マコが名前を呼ぶと兄妹揃って
「(発音が)違う、違う。お兄ちゃんの名前ではない」
と大騒ぎ。

ピアノの教則本であるメトードローズの中にフランスの古い歌「月の光に」がある。マコが習ったフランス語で歌うとこれまた「違う、違う」と言っては口を耳まで開けて笑う。

マコはローズマリーに「おもちゃのチャチャチャ」をピアノで弾いて、大袈裟なグリッサンドを付けた。ローズマリーはそれが気に入って、何かに付けて「Let's play おもちゃのチャチャチャ!」と言い、ふくよかな指で、太っちょのグリッサンドをかき鳴らしていた。
 ゴドウスキー夫人には「さくら」を教えた。柔らかな日本語が素敵だと言っていた。

 リサは実在する従姉の「ナタリー」にぞっこん参っていた。
「ナタリーがどんなに素敵か。自分はとてもかなわないわ」
「あなたもとても素敵よ」
「でももしマコがナタリーに会ったら、私なんかメじゃなくなるわ」
長男はトロント王立音楽院でピアノを習っていた。先生の名前はチャイコフスキー。
門下生の音楽会がアベニューロードの音楽院の支部で開かれるので行くことになる。

リサがトコトコと地下の私の部屋に降りてきた。
「何を着るの? 私、あなたにきれいにして来て欲しいの。洋服を見せてちょうだい」
タンスを開くと
「これを着て行って」
とカナダに来た時着ていたスリーピースを指差す。

「夏の服だから着れない。これを着るつもりよ」
と赤いワンピースを指差すと
「いいわ」
と部屋を出て行った。さすが女の子。

家の中には洋服もおもちゃも山程あった。
フランスの現代童謡のレコードの中の「ナタリー」と「電話の歌」が気に入った。
「ナタリー」は日本でいう「さっちゃん」のような小さな女の子を恋する歌だろう。
何かにつけて「ナタリー、ナタリー」と名前が繰り返された。
「電話」の方は「そらそら電話がなるぞ。もしもし、お嬢さん、奥様、旦那様」位のフランス語しか分からなかった。
メロディーの躍動感からベルが鳴って「さあ出るぞ」の冒険が感じられた。

夫人はアルジェリア出身のフランス系ユダヤ人なのでフランス語のレコードがあったのだろう。フランスの歌の美しさは、言葉のせいか特別のものがある。私はこの2曲に聞き惚れ、慰めとした。

マコは疲れていたので子供と遊ぶ時は、体を横にしたかった。
ローズマリーひとりの時は、ベッドで息を秘そめて、「オオカミが来た」と毛布をかぶってテントを張る遊びでごまかした。
引っ付くとなるとほっぺを押し付け、両腕をマコの首肩に廻して、時々、"A wolf "だけでグーといびきをかいて寝てくれた。

3人一緒の時は、ひとまとめにしてベッドに寝かして、こちらはオオカミの真似をする。
決め手は毛布をかぶせることだ。見えなくなると想像の世界に入りやすい。
「何か匂うな。男の子一人に女の子二人の匂いがするぞ。さて、どの子から食べようかな?」

クスクス笑いが始まっている。毛布の上から目星をつけて、順番に公平に体をひねる。
恐ろしそうに指をもみ込んで、違う声が上がるのを楽しむ。
「さぁて、うまいか、まずいか、、、」
最後に毛布をパーッと剥ぐと、子供達は身も世もない程、幸せそうに笑いこけていた。

ガーデンパーティーの時にジョーン・フィリップを追いかけまわして、目が合うとおにごっこを始めたけれど、よく相手になって、逃げてくれた。
子供は大人と違って愛しいとマコは残酷な家の中で、モーツァルトのオペラで遊ぶ気持ちになれた。

子供は、どうして少しの事ですぐ幸せになれるのだろう。
きっと、相手がどれ位お金を持っているか? なんて考えないからだろう。
今現在の事しか考えないから前後左右に気が散らないのだろう。



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by mhara21 | 2006-05-19 09:40 | 後追い日記81年 | Comments(0)

後追い日記81年37・住み込みベビィーシッター

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#住み込みベビィーシッター

ある晩マルセイラに電話する。
「マルセイラはロングアイランドの父親の所に帰ったわよ。あなたは誰かベビーシッターを知らない?」
「お宅にピアノはありますか?」 
「あるわよ」
というわけでゴドウスキー家の奥さんと会う。
週給20ドルでこの住み込みの仕事をすることにした。子供3人のベビーシッターである。

場所はノースヨーク市。地下鉄ドンミルズの駅からバスに乗る。
マコは数霊術から、9番地の番号に不吉な予感がした。案の定、その後の40日のひどさったら!

下の女の子2人は、次の日からどちらが新しいベビーシッターの愛を獲得するかで競争する。
二女のローズマリーは1日中歌を歌っている愛敬のよい子で3才。
父親に似た特別大きいクリスタルのような目のローズマリーは、朝、目が覚めると1番に「マコはどこ?」と聞く。
夜の添い寝は天国。羽二重モチのような肌の持ち主のローズマリーはどこまでも柔らかく体を押し付け、とっておきのキスを最愛のベビーシッターにサービスする。
かと思うとマルセイラが教えたスペイン語で1から10まで数えてみせる。

「興奮してして大きな声を出すとお姉ちゃんが怒りに来るよ」
と助言したのも束の間、すっとん狂な声を出す。
「リ、リ、リサ!!」

見ると長女のリサが亡霊の様にベッドサイドに立っている。
「ずるいわ、ローズマリーと寝るなら私とも寝てよ」

それではとリサのベッドに移動する。
リサの体は秋のオンタリオ湖のように冷たく、30cm離れてソッポを向いて寝てしまう。
これでもマコと一緒に寝たいの?
ローズマリーの濃厚な表現に慣れたマコには、物足りない。

リサが、朝顔型のコップでピンクのレモネードを飲む。口の両端から頬にかけて、ピンクのカイザル髭が付く。話していてもその髭が可笑しい。

ある日のことリサが、「ロビンソン夫人は今朝、お亡くなりになりました」
と言ってくれと頼んできた。
「どうしてそんなこと言わないといけないの?」
「どうしても言って欲しいの」
そのセリフを喋べると、突然リサは「ウォーン」と激しい身振りで号泣する。西洋のガキってどうしてこうドラマチックなのだろう。



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by mhara21 | 2006-05-18 13:22 | 後追い日記81年 | Comments(0)

後追い日記81年36・引っ越したい

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#引っ越したい

ヴァンクーヴァーからの帰り、空からトロントの夜景を見た時、「しあわせとは何だろう?」と悲しくなる。
憧れのグールドが手にしていたレコードを贈られ、グールドのいる街に再び近づいているのに、マコの心はなぜか暗かった。

戻った下宿にはインド人の住み込みのベビーシッターが来ていた。改築以来の埃はそのまま。

ベビーシッターを頼まれたハーマイオニーの母親は新移住者だ。
開業歯科医をこれ以上増やしたくない歯科医師会の方針のために、なかなかその資格が取れず、訴訟に持ち込むための準備に時間が必要なので私を雇ってくれた。

ハーマイオニーはマコといるとミルクを沢山飲んだので、娘の食の細さを心配していた母親は喜んだ。
寝かし付ける時ハミングした子守唄は、マコの母親が唄ったフンパーディンクのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」の「夕べの祈り」。
子供の讃美歌として唄われる「お星が光る、ピカピカ」も唄った。

梁夫人からも子守をしてくれたら、下宿代と食べ物は無料でいいと言われた。でも下宿先の赤ん坊は楽しみとして相手をしたい。家主との間で労使関係を作りたくないので断わった。

この下宿は住み心地のよい所だったのに、虫騒動以来いつとはなく、「どこか新しい下宿を探して見ようかな?」という気になっていた。

Abendsegen



SUSE LIEBE SUSE
(EIA POPEIA)
ズーゼや、かわいいズーゼ(ねんねんころり)



http://www.geocities.jp/ezokashi/d_suseliebesuse.html (歌詞)
http://www.geocities.jp/ezokashi/otod/suseliebesuse.html (楽譜)


Suse, liebe Suse - Kinderlieder zum Mitsingen | Sing Kinderlieder
https://www.youtube.com/watch?v=70byA5pTyew



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by mhara21 | 2006-05-17 16:40 | 後追い日記81年 | Comments(0)

後追い日記81年35・ベートーヴェンのバガテル

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#「バガテル」について

ベートーヴェンは、op.33の7曲、op.119の11曲、op.126の6曲のバガテルと呼ばれる曲を作曲した。バガテル曲集に含まれる個々の曲相互の間に特別な関連はなく、いくつかの小曲をまとめて曲集の形をとっている。

ベートーヴェン以前にも「バガテル」と言う名の作品はあるが、バガテルという名の作品をここまで音楽的に高めたのは、ベートーヴェンが初めてとされている。

バガテルとは、「小さなもの」あるいは「つまらないもの」といった原意である。バガテル集は、コンサートホールで聴衆を湧かすタイプの曲ではない。

バガテルはプロコフィエフの「束の間の幻影」、ドビュッシーの前奏曲、ショパンの前奏曲と同一線上にある作品とされている。

プロコフィエフの「束の間の幻影」は、現代的で宇宙空間にまたたく星の光や、そこに到達する憧れや解放を表している。バガテルは、人の不機嫌や肩のはり、ヒステリーや不和、憤激が楽しい感情にすげ替えられる。

バガテルには、憎みたくても憎めない、争いたくても争えない、人や自分を否定する事の出来ない国がある。悲観して情けながっている人が、同時に、バガテル王国にも住んでいるのだ。

人間は、自分自身を「つまらない」「小さい」と思うから、腹も立つし、悔しいけれど、実際はおもしろくて大きな不思議な力に満ちている。

ベートーヴェンはバガテル集を通して、人間が本来住んでいる心の世界を見せて、「最小は最大である」ということを私達に伝えたかったのではないでしょうか?



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by mhara21 | 2006-05-16 09:38 | 後追い日記81年 | Comments(0)

後追い日記81年34・チャイコフスキーのシーズンズその2

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   ↑コンスタンチン・コロヴィン 「ロシア 祭りの散策」 1930


#シーズンズ その2 訳詞:近藤あき子/解説:原真砂子

   7月 刈り入れ人の歌
  鳴らせ、腕を!
  振り上げよ、手を!
  汝、顔に吹け
  真昼の風よ!    A.コリツォフ

この曲で収穫している農作物はトウモロコシ。
Bパートの2音のスラーがかかったモチーフが、実ったコーンをムチで
叩き落としている音。Bパートをジプシー風と聞く人もいる。
1月の「炉端で」とこの歌のAパートの旋律は、ロシアの民謡風。
収穫状況ではなく緑色と香りを思い起こさせる曲は、クリスティナ・ロゼッティの詩にミシェル・ヘッドが曲をつけた歌曲「緑のトウモロコシ畑」を思い出す。
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   8月 収 穫
  人々は家族総出で
  収穫にとりかかり
  背の高い麦を
  根元から刈る

  麦の束はぎっしりと
  山積みされ
  荷車からは夜どおし
  キーキーと音楽が聞こえる  A.コリツォフ

この曲集では最も長い曲。
Aパートは、山積みされた収穫物の中から、それぞれの農作物の精霊が出てくる。
歩きまわり、飛びはねて、大騒ぎ。
人間が、ぐっすり眠っている間中、精霊は、おどけたり、
ふざけ合って笑い声がたっている。
Bパートは、人々が天の恵みに感謝を捧げている祈り。

    9月 狩の歌
  時が来た、時が来た!角笛が鳴る
  猟犬番は狩猟服に身を包み
  早朝、馬にまたがる
  紐で繋がれたボルゾイ犬達が
  とび跳ねる  A.プーシキン(「ヌーリン伯爵」)

全モチーフ、どこを取っても「狩の歌」にふさわしい曲。

   10月 秋の歌
  秋が私達の粗末な庭一面に舞い降りる
  黄色に色づいた葉が風で飛んでいる   A.トルストイ

  セピア色と物悲しい秋がよく表現されている。
  昼下がりのメロドラマの主題にもふさわしい。

   11月 トロイカ
  憂愁を抱いて、道を視るな
  トロイカの跡を急ぐな
  心の裡なる苦悩を
  すみやかに永久(とわ)に消せ!  N.ネクラーソフ

トロイカとは3頭立ての橇(そり)のことで、冬のロシアの風物を代表していた。
とても上品で優雅に仕上がった曲。
ラフマニノフは、「トロイカ」を自身の演奏会のアンコールに好んで弾いた。

   12月 クリスマス
  ある主顕節の夕方
  娘達は占い遊びをして
  靴を脱ぎ
  門の外へ投げていたよ   V.ジェーコフスキー

  (主顕節=イエス洗礼祭、1月6日、聖誕生祭後12日)

不思議な妖精ノエル(フランス語でクリスマスの意味)
虹のオレンジ色の所に暮らしているが、
クリスマスイヴになると1人ぼっちで新年を迎える人々の所へ現れる。
ダンスが上手なノエルは、踊った事のない人や病気で寝ている人と踊る。
ノエルは、訪れた人が1番逢いたがっている人々の面影を運び、喜びを与える。
たっぷり遅くするように指示のあるアルペジオは、再会を暗示しているかのよう。
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Bパートで、人々は心の奥底の悲しみを語るが、ノエルは明るさで受け止める。
ノエルと過ごす夢のような7日間は、数分にしか感じない。
除夜の鐘が鳴り出すとノエルは身支度を整え、虹の国に帰って行く。


絵は「チャイコフスキーの12ヶ月」から 11月


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Tchaikovsky The Seasons Чайковский Времена года Valentina Lisitsa
piano ヴァレンティーナ・リシッツァ


ヴァレンティーナ・リシッツァ (Valentina Lisitsa 1973年12月11日 - )は、
ウクライナ・ソビエト社会主義共和国(現:ウクライナ)生まれのピアニスト。
現在、アメリカ合衆国に在住し、世界各地で演奏活動を行っている。



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by mhara21 | 2006-05-15 09:45 | 後追い日記81年 | Comments(3)

グレン・グールドの生家への地図など追加写真 by モニカ

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初めてのsouthwood tour の時、抱えて行った地図がでてきた。渡加以前に琴美さんから送ってもらったものだ。ワクワクと眺めた思い出深い地図。

その日記にもアップしたけれど、オリジナル日記の文を混じえながら、新しくここにも貼付けよう。
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リー通り(Lee Ave. 丸で囲んである)を上がるとグールドの通った学校が見える。
そこを右に曲がるとサウスウッド通り。北に上がって歩を進める。
(丸で囲んであるSouthwood Dr. の文字が黒くなっている所がグールドの生家)


グールドが住んでいた家(車の置いてある所。左半分のみ)。手前には沢山の木々。
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あの2階のどこかに少年時代を過ごした彼の部屋がある。

上記写真の右上にある道路表示案内のアップ
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オリジナル記事へ(後追い81年12)


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by mhara21 | 2006-05-14 16:03 | 後追い日記81年 | Comments(1)

後追い日記81年33・チャイコフスキーのシーズンズその1

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#同人誌の友人へ

ご無沙汰しています。
カナダでの日記や紀行文を同人誌へ送るようにとのご希望ですが、
私は住む所もままならず、ジプシー気分で生きています。
それにお恥かしいことに、カナダという自然に身を浸しながらも
「あめりか物語」や「ふらんす物語」の作者
永井荷風のような表現力がないのです。
ヴィザを取ることの大変さや、他人と同居することで
感受性がヘチャげているのかも知れません。

グールドに関しても、たとえ会えたとしてもそのまま日本に帰る気がしません。
私は一体何をしたいのか全くわからないのです。
こんなファンの集中力の対象になっている音楽家が、
私のせいで病気しないかと心配になります。

同封のエッセイは、日本で聞きなれた曲を懐かしんで、
響きを思い出しながら書きました。
長さもそれぞれですので、編集に都合のよいものがあれば使って下さい。
これから、どこで暮らすのかわからないので、完成した小冊子は、
留守宅に居所を聞いてから送って下さい。お元気で。



#シーズンズ 訳詞その1:近藤あき子/解説:原真砂子


   1月 炉端で
  静かな安らぎの部屋よ
  夜になると薄明かりに包まれ
  暖炉の火は消え
  ろうそくにJ字(もえがら)ができる・・ A.プーシキン

体の芯から温まる美しい曲。
火の世界の幻想と精霊たちのバレーが聞き物。 
Bパートでは、年若の炎の精霊たちはピンクのドレスを身につけ、
また年長のグループは、オリーブグリーンのドレスで踊っている。
最後の超ピアニッシモの和音は、火花の精が
「私ここにいるの。気づかないの?」と。

   2月 謝肉祭
  もうすぐ賑やかな謝肉祭
  どこも底抜け騒ぎで沸き立っている   P.ヴァーゼムスキー

日本で祭というと春夏秋冬だから、2月の祭りに驚く。
ロシアの人は氷の中でお祭り騒ぎをするそうだ。
Aパートの第1モチーフはおふざけを氷で固めた様だ。
Bパートには、馬につけた鈴が鳴り響くところがある。
オーケストラの編成を思わせるダイナミックな曲。

   3月 ひばりの歌
  野に咲く花々が揺れ
  空には光の波が放たれ・・・・・・
  空色の深淵に
  春のひばりの歌が満ちる  A.マイコフ

ト短調。弾くのにエネルギーの要らない美しい曲。
チャイコフスキーには「子供のためのアルバム」に
ト長調の晴れやかな「ひばりの歌」がある。
子供向けの方は、純然たるひばりの歌。

シーズンズに書かれた「ひばりの歌」は、「片思いの歌」
 Aパートはひたすら憂鬱である。
 Bパートでは想いが昂じ鳥になって、あの人の家のガラス戸を、
 くちばしでつついて、『こっ ちを向いて!!』
 そして「おもしろくないわ。つまらない。」とつぶやく3和音で終わる。

   4月 松雪草
  愛らしく、清らかな
  松雪草花よ
  すかすかの最後の残雪の傍らに咲く
  過ぎ去った悲しみの最後の涙よ
  新しいもう一つの幸せの最初の夢想・・・ A.マイコフ

松雪草の中には、男の子と女の子。朝露を食べて、
いつも仲良く2人きりで暮らしている。
この2人の楽しみは鬼ごっこ。
女の子の方が、追いかける男の子よりもいつも少しだけ速い。
だから、決してつかまらない。
そして、夜になると、月と星の光を集めて、花の中で眠る。

    5月 白 夜
  何とすばらしい夜!何と完全な充足!
  ありがとう、愛しい、北の夜半の果てよ・・・・
  氷の王国から、吹雪の雪の王国から
  何と生き生きと美しく 汝の5月は飛び立つことか! A.フェート

出だしのアルペジオが、音楽の女神のハープのよう。
Aパートでは、単純なメロディで空の広がりが、
Bパートでは、夢想がよく表されている。

   6月 舟 歌
  岸辺に出よう。そこでは波が
  我らの足に接吻(キス)をし
  星達が神秘なる憂愁をたたえて
  我等の頭上に輝くであろう。 A.ヌレシチェーフ

ヴェネツィアのゴンドラの船頭の歌である。
バルカローレの形では、ショパン、メンデルスゾーン、
ブルグミューラーなどの他のロマン 派の作曲家が作品を書いている。
ト短調のAパートから、ト長調のBパートへの移り変わりは、
活気が出て、ゴンドラの上で 風を受けている爽やかさを、
その先のドラマチックなアルペジオは、アニメーション効果を持っている。



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by mhara21 | 2006-05-14 11:25 | 後追い日記81年 | Comments(6)

後追い日記81年32・大山氏とのおしゃべり

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#大山氏とのおしゃべり

キャンセルした航空券の受取金と冬物を取りに大山さんの住むヴァンクーヴァーに行く。

大山「トマス・マンの『魔の山』、英語訳は、「magic mountain」だよ。日本語の「魔」は、悪魔の意があって、名作を一般読者から遠ざけている気がする。『魔法の山』と訳すべきだよ」

マコ「デモーニッシュのことを勘違いしているのに似ている。デーモンは、ギリシャの詩人ヘシオドス(前8世紀末頃活躍した叙事詩人)の考えからきていて、ドイツ人は人に感動を与える文学者や音楽家によく見られると解釈している。悪魔の意味ではなくて守護霊として肯定的に現れるデーモンの事よ」

大山「ショーペンハウエルが、訳者は裏切り者といってるよ」

マコ「作曲作品を演奏家がよく弾けないのに似ているかもね。訳者によっては全く読めないもの」

大山「さすが音楽家のコメント」

マコ「グールドは音楽家としてだけでなく、文学哲学青年としても出来上がっている人。
ボードレールの詩から、ゴルトベルクのムードに近い詩を選んで、
ライナーノーツに一部引用している。マンは彼の敬愛する作家よ」

大山「ところで、君はマンの作品を読んでるの?」

マコ「いいや。ハイジが精一杯よ。たまたま自分の読んでいる本を人が読んでないからって、バカにする人は嫌い。何億冊あるかわからない本だし、読み方だって違う訳じゃない」

大山「アハハ、相変わらず気が強いね」



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by mhara21 | 2006-05-13 10:09 | 後追い日記81年 | Comments(0)

後追い日記81年31・日本からのお客さま

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#日本からのお客さま

「マコさん、お久しぶり。いやぁ、もうほんと、あなた身一つでこんな所でよくやっているよ。僕は去年、ロンドンで数ヶ月暮らしたけれど英語には参ってしまった」

日本から最初のお客、西村氏と長女の明美ちゃんがトロント入りをした。
 「あんた日本にいた時、痛々しかったけど、なかなか生き生きしている。
ところで、グールドはどうなっているの?」
「この間、レコードをいただいたわ」
「それはすごいじゃない」

「手近なところでナイアガラの滝に行こう」


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マコと父娘は、ナイアガラで、カナダ滝の観光をした。

滝の飛沫はその辺りの空気をイオン化し、人間の脳波をアルファ波、瞑想状態にする作用があるというが、俗化された巨大な滝を横から眺めても、何も感じない。
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マコは、お店で安売りのトルコ製の財布を3つ買うか2つにするか悩んだ。3つめは店の人が「本当のお買い得」といったけど、プレゼントに3つも買うのは身分不相応とやめにした。

帰りのバスの中で、マコは突如、あの滝の白いベールの向こうに16才の冬に精霊に連れて行ってもらった異界の山を思い出した。こうなると黙っていられなくなり、明美ちゃんと話し込んだ。

「ニーチェの『ツァラトゥストラ』にその山が出ていて、読んだ時、びっくりしたの。超人思想は永劫回帰とセットになっていないとやり切れるものではない。
私は20才の時、今が永遠と気づいて16才の時に授かった超人思想の重荷から解放された。
グールドもニーチェが好きらしいの。どんなに読んでいるでしょうね。ドイツ語の『超人』(u¨bermennsch)には、登高者の意味なのに、英語訳は『スーパーマン』でおかしいと思わない?
私は自分のことをグールドの演奏を聞く伴侶と思っているの」

「私の絵の先生が、芸術というのは、『他への奉仕だ』といっていたわ。あなたのように人に見えないものが観えたり、聞こえないものが聴ける人、素晴らしいなぁと思うの」
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日本では「滝行」といって小さな水量の滝に打たれる宗教的な修行の場としてとらえる滝への考えがある。
秋の陽ざしを避けられるバスの中で、マコは、紫外線の刺激から頭を守り、滝を味わいだした。

時間を超越する現実からの空想、あるいは思考力が理屈で先に行くだけの自由着想で頭がうずまく。滝は今、オゾン療法となり、マコを治癒する。2つの滝には、アメリカとカナダに彷徨う霊魂をやさしく浄める神様がいらっしゃる。
水のカーテンの奥には大きな舞台がある。カーテンをくぐり抜けるとドラマの女主人公になるマコの姿が見える。マコは今日1日を滝に住む龍神と共に過ごした気持ちになっていた。



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by mhara21 | 2006-05-12 11:03 | 後追い日記81年 | Comments(2)

後追い日記81年30・マコの日記

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#マコの日記 10月15日

コーワン通りの角の図書館の地下でもグランド・ピアノを借りることができる。教会の暖房費が気になるのでここも使わせてもらう。ただし一人が週に2回、1回につき1時間と言われた。今日も時間を無視。「時間オーバーよ。規則は守って下さい」と館員。少しも応えない。もっともっと弾いていたい。

この間AandAレコードで、グールドのゴルトベルクのレコードを、楽譜店で「ヘンレのゴルトベルク」の楽譜を見つけた。思わず買う。

あちこちからベビーシッターを頼まれる。体の調子が良くなくても断れない。下宿の赤ん坊が泣くたびに、なぜかゴルトベルクのアリアのヴァージョンみたいに聴こえる。
 生まれたばかりの嬰児のことをトマス・マンは、「清澄、優美、平衡、共感」と形容したが、いたいけな無抵抗の生命に対する畏怖の念を抱かせる小さなものを表現出来た音楽は、あのアリアの他にあるまい。生まれたての子供の持つオーラは、神の寵愛ともいうべき光に満ちている。


ゴルトベルクのレコード持参で子供とグールドを聴く。子供ながらに速いところで、「ヒュッ」というのがおもしろい。



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by mhara21 | 2006-05-11 09:26 | 後追い日記81年 | Comments(1)