合い言葉GG
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☆マサコのプロフィール
13才のときにグレン・グールドのピアノに 出会う。以来抱き続けたグールドに会うという夢を追って28才でカナダへ。後追い日記はその記録である。 属性はシャーマン。 ☆ミクシに習って、ぬさんからの紹介状 不在の幻影から愛するひとを救い出し、グーグルキャッシュの中に愛のエクリチュールを刻印しつづける、GGの恋人。二人はもう触れあうことができないが故に永遠に惹き付けあうことができる、まるで恒星と惑星の関係のような、あらゆる恋人が夢見るユートピアに住むひとです。 ☆このブログの本拠地は 海峡web版 です。 グールド、並びにグールド家からのプレゼントはこちら。 グールドのサイン入りレコード もう1つのレコード グールドの本とそのメモ書き パパグールドさんのご本 ☆グールドおよび後追い日記に関係のないトラックバックやコメントは削除する場合があります。 カテゴリ
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後追い日記81年19・オランダ生まれの天使English version of 1981 diary ← Click here for the list. #オランダ生まれの天使 7月11日、オキーフセンターで「白鳥の湖」を見た後、待ち切れずにスミス家を訪問する。急に行くのは悪かったけれど、電話ではとても尋ねにくかった。裏のテラスで音がしていた。裏に廻ると出来上がったテラスの所に美しい女性がいた。 「こんにちわ」 「マコ?」 その声は既に何か安心していい響きがあった。 「あなたは奥さんですか?」 夫のほうを見やりながら「そうです」とフランシスは感慨深げに答える。 仲の良いご夫婦だと思った。 「グールドのお父さんに電話していただけましたか?」 「彼は病気で、電話を掛けた時に話を切り出せなかった」とロバート。 「私、これから家の中を見せてあげるわ。いらっしゃい」 と勢いよく立ち上がったフランシスは、大きなお腹をしていた。もうすぐ子供がこの世に生まれてくるのだ。 部屋の中は美しかった。慎ましやかな広さの部屋が秘やかに並んでいて、童話的なムードだった。階段が素敵。2階に行く。 「ここよ、ここがグレンの部屋だったのよ」 狭い部屋で、大きなグールドが、住んでいたとは思えなかった。横に1部屋あった。それから夫妻の寝室。その奥には勉強部屋。 「私たちは前にこの通りの南の家に住んでいたの。弁護士の主人はベッドルーム以外にもう1部屋、書斎が欲しかった。グールドさんも再婚してこの家を私たちに売りたがっていたから、それでこの家を買うことに。お父さんにしたら、全く知らない人には家を売る気にはなれないのね。 息子にあれだけのことをしている父親は、いないもの。この家は、息子との思い出でいっぱいよ」 「ご主人は弁護士なの?」 「ええクイーン通りの会社の弁護士よ」 「それで分かったわ。トロントに来る前ヴァンクーヴァーに1ヵ月半いたけれど、その頃からトロントに行ったら弁護士に会うと思っていたの」 「どうして?」 「ただ感じていたの」 フランシスは優しく笑った。5人姉妹の下から2番目で人慣れしているせいか、利発で魅力的な女性だ。 「長いこと病気をして、グールドが私の生きがいだった。いつかカナダに来て彼と会うことを支えに生きて来たの」 相手はそれ以上聞かなかった。 「お腹 重くない?」 「そりゃもう重いけれど、何より赤ん坊がよく動くの。もうすぐ生まれるわ」 階上の部屋の案内が済んだフランシスに思わず握手を求めた。握手というよりは手をつかみにいくような迫力だった。 「こんなによくしていただいてありがとう。お礼も言えない位に感動しています。ご親切をありがとう」 「どういたしまして。この家には高齢の父上が再婚した時に持って行けなかった彼の本やレコードがあるのよ。グールドは人嫌いではないけれど、ファンにまとわり付かれるのが煩わしいのよ。グールドのテレビ出演は、彼が恥ずかしがり屋でない証拠よ」 「それにしてもあの変わった人間関係の在り方は、一人っ子のせいではないかしらね」 言葉の問題が悔しい。母国語であれば楽しい話が出来る人達なのに、思っていることを表現出来ず、焦ってしまう。 日本語で話せても、相手が内容に興味がなければ話は通じないのだけれど‥。 マコの英語力では、グールドに会えてもコミュニケートは無理。 下の部屋にはピアノがあった。 「弾く? 彼の母親のフローラのピアノよ」 アクションの素晴しいピアノだった。勿論、グールドも弾いたであろう。 ピアノを弾きながら右手の本棚を見るとその一番上には、古ぼけた分厚いSPのアルトゥ−ル・シュナーベルのベートーヴェンピアノソナタ全集。 ラジオ放送でグールドのベートーヴェンソナタを聴いていた母が、「グールドはシュナベールの真似をしている。シュナーベルのファンに違いない」と笑い出したことがあった。 母の思った通りだった。このSPは母が10代の頃、台北でお兄さんと聴いたレコードと同じ。やはりこの家にあるのだ。 ロバートはテラス作りの仕上げをしていた。先月はご主人に、そして今回は夫人に最高のもてなしを受けた。 「あのピアノはグレンの母親のものだよ」 「奥さんからお聞きしました」 「お父さんが、この家を売る時に持っていけなくて、買わないかと声をかけたんだ」 「あれはチッカリンですね」 「そう。この家にはグールドさんたちの残したものが、かなりある。また見にいらっしゃい。ピアノなかなかいい音がしていたよ」 「よいテラスになってきましたね」 お別れの挨拶をして、一層膨らんだ夢と共にサウスウッドの丘を下った。 下宿に戻ると、なぜか強烈にグールドの母のフローレンスさんのことばかり思い続けた。 −3歳よりアマチュア・ピアニストの母にピアノを習い− というレコードのジャケット裏の文が目の前に出てくる。 −あの家なの?グールドが修行したのは?− なぜかフローレンスさんとフランシスが重なる。 フランシスは、1953年オランダ生まれの女性。家族の夢と共にカナダに渡って来た。カナダ行きの船に乗っている賢そうな子供の時の写真を見せてもらったことがある。 快活でお話が好きで、後の付き合いの中で時々、「あなたはさっきから私の話をよく聞いていないわね。今、私が何と言ったか、最後の所言ってごらん!」とまるで姉妹の会話のようであった。 next 81年20へ **********************************
by mhara21
| 2006-04-23 11:21
| 後追い日記81年
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