合い言葉GG
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☆マサコのプロフィール
13才のときにグレン・グールドのピアノに 出会う。以来抱き続けたグールドに会うという夢を追って28才でカナダへ。後追い日記はその記録である。
属性はシャーマン。


☆ミクシに習って、ぬさんからの紹介状
不在の幻影から愛するひとを救い出し、グーグルキャッシュの中に愛のエクリチュールを刻印しつづける、GGの恋人。二人はもう触れあうことができないが故に永遠に惹き付けあうことができる、まるで恒星と惑星の関係のような、あらゆる恋人が夢見るユートピアに住むひとです。


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32のピアノソナタ ・・ 酒奈鈴の録音で 


b0071688_16405.jpg ベートーヴェンは全部で32のピアノソナタを作曲した。この全ピアノソナタの中で全楽章を通して一番好きなのは第16番のト長調のソナタである。

 この曲はイタリア趣味ということで、ベートーヴェンの堅苦しさがやわらいで優美な動きが多い。ユーモアや機知に富んだモティーフに心が和む。
 私は子供の時からト長調の柔らかなパステルカラー好きで、ト長調の曲なら何でも好きになる。


b0071688_18525.jpg  ピアニストのアルトゥール・シュナーベルが1932年から1935年にかけて全曲録音したSP盤は、グレン・グールドの宝物であると同時に、私の母の10代の宝物でもあった。母は2番を愛し、終生、全楽章を家事や育児、看病の合間に弾いていた。勿論他のソナタにも打ち込んでいて、母がピアノを弾くとご飯やおやつが遅れるので腹を立てていた私であった。
しかし今となると、それは食べ物以上の親からの贈物である。

 母やグールドを夢中にさせ、今も私が首ったけのシュナーベルの演奏とは?b0071688_191936.jpg

 料理でいうと、お酒の違いである。料理に調味料としての酒の有る無し、その品質は味に大きく関わる。音楽も同じである。

 音符の一つ一つの味を充分に引き出して、かつ香り高く、全体をまとめる音楽酒の存在は、その酒が100年に1度の名酒であれば、当然、他の演奏家を大きく引き離す事になる。

b0071688_1112562.jpg 次に遠近法である。遠くはヒマラヤ連山の借景、近くに1輪の花の大写しとシュナーベルの音楽の絵は平面的ではない。

 3番目は音は澄み渡っているが、人間の恥じらい、激怒が自由に表現されていることである。

 最後に、神経は細やかなのに、ヒマラヤ聖者のように心の山を一翔びにする神業のようなアーティキュレーション(音楽の心を語る話し方の技術)である。彼のフレーズの長さは天文学的である。

b0071688_11291.jpg 全体を4小音楽におけるフレーズとは、起承転結の事で、殊にこの「承」に当たる1小節の最初の音を打つと全体のフレーズは、すぐさまバラバラになる。
節のフレーズ(小楽節)とするフレーズは珍しくないけれど、8小節のフレーズ(大楽節)、さらには16小節と、シュナーベルの場合は、時には32小節が一フレーズにまとめられていて、世界に類のない演奏となっている。言葉の意味としてのフレーズ感が、文学的である。


b0071688_116354.jpg シュナーベルの演奏を愛した母は、子供達を音楽家にしようとは思わなかった。
「シュナーベルのように弾ける人が音楽家になるのである。他の人々は止めておいた方がいい」と10代の時に心底感じたのだろう。

「音楽は趣味でやり、プロの世界から呼ばれた人だけがプロになればいい」とも言っていた。


b0071688_120172.jpg お陰さまで、私は、空を見る度にシュナーベル氏が我が家に与えて下さった幸せに感謝する。毎日の生活は音楽で飯を喰わない喜びで一杯である。

 グールドも又シュナーベルを尊敬していた。旧グールド家に飾ってあったシュナーベルのSPを見る度に、グールドに関する情報の余りない時代に、グールドの演奏を聴いただけで、
「シュナーベルに夢中だったはず」
とグールドの事を言い当てた母の洞察はスゴイと思ったものだった。

 バレンボイム(指揮者でありピアニスト)の自伝によると「精神的な人以外シュナーベルの演奏に見向きもしなかった」そうである。

 ベートーヴェンのソナタの他の曲では1番が好きだが、母はその1番が嫌いだった。弾きにくいと言っていた。
 しかし2楽章のシュナーベルの演奏は、母の話し方に似ていて、母の声音も懐かしく思い出す。

 母は私のグールド狂いとカナダ行を快く思っておらず、毎年9月25日のグールドの誕生日に、お菓子を焼くとあきれていた。自分の誕生日には焼いてくれないので怒っていたのかもしれない。

 ベートーヴェンピアノソナタ32曲の価値を世界遺産として子供に伝えた母の思慮深さと音楽への愛を思う。そしてベートーヴェンの「自由と静寂は最大の財産」という言葉を思い出す。
ベートーヴェン・シュナーベル・グールド・母と四人の音楽家に感謝の心を込めながら。

2004.3.25


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by mhara21 | 2007-03-22 09:44 | エッセイ | Comments(0)
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