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合い言葉GG
by mhara21
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☆マサコのプロフィール
13才のときにグレン・グールドのピアノに 出会う。以来抱き続けたグールドに会うという夢を追って28才でカナダへ。後追い日記はその記録である。
属性はシャーマン。


☆ミクシに習って、ぬさんからの紹介状
不在の幻影から愛するひとを救い出し、グーグルキャッシュの中に愛のエクリチュールを刻印しつづける、GGの恋人。二人はもう触れあうことができないが故に永遠に惹き付けあうことができる、まるで恒星と惑星の関係のような、あらゆる恋人が夢見るユートピアに住むひとです。


☆このブログの本拠地は
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後追い日記83年12・新しい先生 

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後追い日記83年12・新しい先生 _b0071688_15425956.jpg


#新しい先生       

下宿先の女主人アイリーンは、マコの食欲もなく沈んだ様子をピアノの先生のせいだと思っていた。
「マコさん、おばさんがあなたにいいピアノの先生が見つかるように神様にお祈りしますね」

今度こそいいピアノの先生を見つけなければ。
これまでの経験からマコは自分が求める先生への条件があった。
第1は、結婚している女性であること
第2は、レガートをどうやって生徒に教えるか研究が出来ている人
この2つはどうしても譲れない。

学校の先生に相談をした。
「マリーナ・グリンガス  TEL  7××ー27××」
というメモをもらう。
 電話をするとまず、ヴァイオリニストの夫君が出た。取り次がれて女性の声がする。

「私、ピアノの先生はいらないの。
 今、先生なしにグレード10の準備をしているところですが、
 2年生になったら先生が必要なのです」
なんと突拍子もない出だし。

マコは周夫人から、「あなたなんか教える先生はいないわよ」と言われ続けていた。

ひとりでピアノを勉強することはマコにとって苦労ではない。
理解のない人の前で、痛みのために筋肉がカチンカチンになって大慌てしながらピアノを弾いて、
心まで縮こまるよりは、ひとりの方が気が楽。
でも2年生に進級するためには、ピアノの先生を見つけて学校の事務所に報告しなければならない。
そんな想いがたくさんあって、大人になっていないマコの口のききかたは、相手の人を面喰らわせるに充分だった。

最初の “I don't need a piano teacher. ”のところでマリーナ・グリンガスは、世にも可笑しそうな笑い声をたてた。
「あなたは日本からきたの?」
「はい」
「1度、会いましょう」
スタジオ314の前で待ち合わせる。


マリーナはマコが以前から「感じのいい人だなァ」と思って眺めていた人だったのでホッとした。

「なぜ、ポール先生をやめたの?」
「お互いベストを尽くしました」

「グレード10の後、ARCTは受けるの?」 (注)
「いいえ。私は自分の心が豊かになるためにピアノを弾いています。だからテストは受けるつもりはありません」

「わかったわ。私、あなたを教えるわ」

私はマリーナの様子から、高い教養と知性を感じていた。声が大変美しく、文法正しい英語を話していた。彼女は『知性が高く、良心的で、能力はプロ、そして苦労した人』だった。私はグールドの事をどんなに想っているか、また体の半身がいつも痛くて困っている(主に左側だが、しばしば右に痛みが映る)ことを話した。

「トロントシンフォニーのヴァイオリニストである夫が、日本を訪れて以来、日本に恋をしていて、また、日本に行くのが夢なのよ。私たちはロシアから来ました」

マリーナ先生は、甘やかな体の香りがしていた。鋭い英語の音の形には、並々ならぬ頭脳の切れ味が伺われる。スタジオの壁には、モネの「睡蓮」の絵と、現代画が架かっていた。

マコとはすばらしい相性だとは想像もつかなかったから、ドギマギしていた。不安と取り越し苦労で倒れそうだった。

(注)カナダのロイヤル コンサーヴァトリ オブ ミュジックでは1〜10までのグレードシステムをとっている。その上のARCTとは最後の卒業資格のようなもの。



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by mhara21 | 2006-09-20 09:43 | 後追い日記83年 | Comments(0)
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