人気ブログランキング | 話題のタグを見る

合い言葉GG
by mhara21
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
検索
☆マサコのプロフィール
13才のときにグレン・グールドのピアノに 出会う。以来抱き続けたグールドに会うという夢を追って28才でカナダへ。後追い日記はその記録である。
属性はシャーマン。


☆ミクシに習って、ぬさんからの紹介状
不在の幻影から愛するひとを救い出し、グーグルキャッシュの中に愛のエクリチュールを刻印しつづける、GGの恋人。二人はもう触れあうことができないが故に永遠に惹き付けあうことができる、まるで恒星と惑星の関係のような、あらゆる恋人が夢見るユートピアに住むひとです。


☆このブログの本拠地は
 海峡web版  です。

グールド、並びにグールド家からのプレゼントはこちら。

 グールドのサイン入りレコード
 もう1つのレコード
 グールドの本とそのメモ書き
 パパグールドさんのご本

☆グールドおよび後追い日記に関係のないトラックバックやコメントは削除する場合があります。
カテゴリ
全体
後追い日記81年
後追い日記82年
後追い日記83年
後追い日記84年
後追い日記85年
後追い日記86年
後追い日記87年
グールドへのメール
エッセイ
グールド・レストラン
ゴルトベルクをめぐる
8月のゴルトベルク
グールドとエクスタシー
English
本の感想など
未分類
タグ
(168)
(82)
(49)
(43)
(40)
(35)
(31)
(25)
(21)
(21)
(20)
(13)
(13)
(10)
(10)
(10)
(9)
(4)
(4)
(4)
(4)
(3)
(3)
(3)
(2)
(2)
(2)
(1)
(1)
(1)
(1)
フォロー中のブログ
海峡web版
記事ランキング
最新のコメント
貼り付け成功が7年前。 ..
by mhara21 at 23:27
40年も前のことになりま..
by grpspica at 13:57
古いお家が残っててよかっ..
by grpspica at 11:14
ワンダ・ランドフスカとマ..
by grpspica at 09:20
Commented by..
by mhara21 at 11:57
以前の記事
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
more...


後追い日記81年20・グールドハウス

後追い日記81年   ← クリックで一覧へ
英語版1981年日記  ← クリックで一覧へ
English version of 1981 diary  ← Click here for the list.

後追い日記81年20・グールドハウス_b0071688_19364071.jpg


#グールドハウス 

7月26日ロバート・スミス氏から電話。
「1週間前男の子が生まれた。とても幸せだ。今から遊びに来ませんか?」

フランシスは産後7日目で、彼女の実母ケイが手伝いに来ていた。

マコにはグールドハウスに入れるだけでも喜びだった。
裏庭でマトンを焼く。完成したテラスの上で夕食だ。
ロバートは家の中でかいがいしく働く。食事の用意、子供の世話などフル回転だった。
デザートは家の中で頂く事になった。小さなアイスクリームに生の桃が添えてある。スミス家らしい知的なデザート。

「戦後、ヨーロッパの人は新しい国へ行きたいという気持ちを強く持つようになりました。私たちもそうだったの。夫も私も一言も英語が話せないのに、子供4人と移住して来たの。夫は毎日、『仕事はありませんか?』と工場を廻り続けて‥‥」

ケイの話に「あー、又あの話か‥‥」とスミス夫妻は表情を作った。

「日本人がグールドのレコードを1番買っていると読んだことがある」
「最初の頃は一部の人にしか認められなくて、レコードはよく廃盤になりました。66年に録音したストコフスキーの指揮でベートーヴェンの「皇帝」が日本で発売後、1968年頃、一般に知られ、ようやく人気が出ました」

「グレンはとてもお母さんに近くて、お父さんは再婚すべきではないと強く思っていた。それで父親が再婚してから仲が悪くなり、いつも一緒に食べていたクリスマスディナーも止めてしまった。食べるといっても生活の時間帯が違っているからグレンは、何も食べないディナーだったそうよ」

グールドの父親が再婚したから、マコは今、このスミス一家と話をしているのだ。
トロントに着いた日の事からサウスウッドに来た日の事まで説明する。

「最初、乳母車を見た時、グールド家は引っ越したのだと思った。赤いシャツの女の人を見た時はグールドのお姉さんかと思ったの」
「あれはロバートのお母さんよ」

ロバートは話術に優れ、マコに質問を浴びせかけた。
「日本での離婚は?」
「日本の経済は?」
おぼつかない英語で答え、気が付くとテーブルクロスをクルクル廻し、左へ引っぱっていた。フランシスは勢いよく曲がりを直した。

3人はマコがキャラバンに行ったと聞いてびっくり。
「マコはインディペンダントだ」
「キャラバンで世界を旅行したのね」
 (キャラバンに行くと世界50以上の民族のパビリオンが見られる)
「なんでも積極的に自分からこなそうとするのね。 グールドに会えたら、本当にいいのに」
「それにカメラを持っていない日本人なんて私は初めてよ」
「全くグールドに会いにきたのに」
「マコはきっと、頭で写真取って、覚えているのよ」とフランシスの母親ケイ。
「グールドに会えたら、何を証拠に人に会えたと言うの?」

「私は人に話すのが目的でグールドに会いに来たのではないわ」
マコは、不器用で人がなんでもなく出来ることができなかっただけ。カメラは、面倒臭かった。第一、持ち歩くのが邪魔だ。ケイの言うとおり、頭は、詰め込みすぎで重い。ノイローゼの大家。

フランシスが生まれたての次男を抱いて2階から降りて来た。
まずロバートが抱いて、愛情一杯の挨拶を赤ん坊に送る。
フロアースタンドのそばで新生児に母乳をあげるフランシスと寄り添う長男は、フェルメールの名画。

何を見ても、どの空間も、旧グールド家のざわめきや生活状況がダブってしまう。グールドは母乳で育ったのだろうか?
グールドハウスはギリシャ神話の音楽の神様の童話的神殿だったのだ。そこには、ギリシャ神話のような音楽の伝説と神々に祝福されたピアノを弾いた音楽家を生んだ女性のピアノがある。
グールドの母親のチッカリングは、音の粒の揃った、鍵盤が重過ぎも軽過ぎもせず、弾き易いピアノだった。

「私、2階に上がります。又、遊びに来てピアノを弾いてね」
 2代目のグールドハウスの持ち主も幸せ一杯の人達のようだ。

 涼やかに風の鳴る坂道サウスウッドを下る。
グールドも見慣れた木の葉が、ペパーミントのきらめきをマコの肌に送っている。病気の人でカナダに来たいという夢を持っている人がいるなら、カナダに来れるようにと祈ってあげたい。

 映画のシーンのようなサウスウッドでの数時間、顔も姿も悪い女優が、ピアノも英語も下手なのに、シナリオと舞台セットは最高の日を終えた。



next 81年21へ






**********************************
by mhara21 | 2006-04-23 11:24 | 後追い日記81年 | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< <21世紀の追記> 後追い日記81年19・オランダ... >>